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今すぐ始めよう!歯科医院の防災対策

    
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今すぐ始めよう!歯科医院の防災対策

災害は忘れる前にやってくる

 昨今、風水害や地震など大規模な災害が相次いでいます。

 もはや災害は忘れる頃にやってくるのではなく、身近な問題として捉え、日頃から十分な対策が必要です。なぜなら、災害は自分では止められませんが、備えることで被害が大きくなることを防ぐことは可能だからです。

取材協力:東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科救急災害分野非常勤講師 中久木康一先生

いつどこで起きてもおかしくない地震

災害への備えは地域を支える歯科医院としての責務

 備えにより自院の被害が少なければ、被災者や避難者に対して歯科医師としての専門的な見地からの口腔ケアなどの支援ができます。地域の“かかりつけ歯科医”として、患者さんの口腔の健康を災害時においても守るために、積極的な支援が求められます。

 歯科医院には大きく3つの災害リスクがあります。
これらを守るために自院ではどのようなアプローチが必要かを考えることが防災対策の第一歩です。

災害リスク01|ヒト

 スタッフ、患者さん、自分自身を守る。

災害リスク02|情報

 歯科医院は多くの個人情報を扱っています。特にカルテはその最たるものです。

災害リスク03|カネ

 災害後、再開するためにも必要です。(通帳やカード、実印や登記関係の書類など)

01|「ヒト」に対する対策

■災害発生直後の行動ルールの策定
 院内にいるときだけでなく、訪問診療中に災害が来たらどのように行動したらよいかを話し合っておきましょう。

■スタッフの安否確認の連絡方法、連絡先一覧表の作成
 特に業者やメーカーは災害時の心強い支援者です。連絡先に入れておきましょう。

■避難しやすい動線をつくる
 出入り口に物が置いてあったりして避難の妨げになっていませんか。ビルのテナントで入っている診療所は必ず非常階段など避難ルートを確認しておきましょう。

■ユニットやパソコンなどの固定
 ドクターユニットや無影灯などアームがあるものは地震時、大きく揺れてケガを引き起こす危険があります。日頃から診療が終了したら固定しておくとよいでしょう。

■ハザードマップを確認し、自院の地域の特性を知る
 自院のある地域の地形や危険な場所、過去の災害とその被害状況などを把握しておきましょう。

02|「情報」に対する対策

■データのバックアップ
 コンピューターのサーバーを2つに分けて定期的にデータをバックアップ。診療所が浸水しやすい地域にある場合には、コンピューターの本体は上方に置くほうがよいでしょう。

■紙のデータを準備
 地域の避難所などを示した避難マップや、消防や警察などの災害時に役立つ連絡先は紙でも準備しておくと停電時でも患者さんやスタッフに渡すことができます。

03|「カネ」に対する対策

■耐火金庫
 現金や通帳、印鑑・印鑑登録証、歯科医師免許証、運転免許証などの貴重品は耐火金庫を用意して保管するとよいでしょう。

■非常用持ち出し貴重品を用意
 持ち運べる金庫を使っている場合は、災害時の空き巣対策として持ち出したほうが安全です。

車を被災から守ることも忘れずに

 車は災害後の移動手段としてだけでなく、電源にもなります。いざ使おうとしたら車が浸水してエンジンがかからなかったということがないように、例えば大雨がきたら高台に移動させておくなどの対策を行いましょう。

取り組み事例01|災害食フェスタのススメ

 最近の災害食は種類も豊富。年に1度、大掃除などのタイミングで、スタッフ全員で買い替え時期の災害食を食べ比べ、美味しかったものや足りないものを揃えていくのがおすすめ。使い捨てで使用する携帯トイレも体験しておくとよいでしょう。

取り組み事例02|避難訓練

 スタッフの入れ替わりや参加率を考慮し、またしっかりと意識を定着させるためにも、できれば半年に1度、スタッフ全員で実際に避難経路をたどってみましょう。併せて行動ルールや、それぞれが担当することなども確認します。

取り組み事例03|地域連携

 災害時、自分やスタッフだけの力で歯科医院を守るには限界があります。日頃から地域の人たちをはじめ、歯科医師会や歯科衛生士会、医師、看護師、薬剤師、福祉関係者など他の職種の人たちと交流を深めておきましょう。

■自分の命を守るのが最優先
 被害をできるだけ少なくするためにも自助が最優先になります。スタッフにも常に伝えておきましょう。

■休診であることをHPなどで患者さんに知らせる
 予約をしているからと台風などが来ていても来院する患者さんは少なくありません。休診にした場合は、ホームページや直接連絡するなどして速やかに患者さんに知らせましょう。

■自院の被害が少なければ、地域歯科保健活動も
 災害時、地域の歯科医師会を中心に避難所などでの歯科保健活動を支援することがあります。余裕があれば歯科医師会などに連絡し、活動に参加するのもよいでしょう。

■インフラに問題がなければなるべく早く再開
 建物や器材、また電気、水道、ガスなどのインフラへの影響が少なく、二次災害などの可能性も低ければ、歯科医院を再開し、地域歯科保健医療サービスの提供を継続できるようにしましょう。

危機管理としての防災対策

01|新型コロナウイルス感染症も災害

 地震や台風だけが災害ではなく、新型コロナウイルスやインフルエンザなどの感染症も自然災害です。先の新型コロナウイルス感染拡大時の自院の対応は十分だったか検証し、次に備えましょう。

02|働きやすい職場づくりに欠かせない

 スタッフを獲得したり、長く働き続けてもらったりするためはスタッフが働きやすい職場づくりが欠かせません。防災対策はスタッフの安全を守るリスク管理の一つで、職場づくりにつながります。

03|安心できる歯科医院が支持獲得

 地域の人たちにホームページなどで、防災対策に力を入れている、安心安全な歯科医院であることを積極的にPRしましょう。それも地域住民への信頼獲得につながり、結果的に医院経営にもプラスに働きます。

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