よりよい歯科医院を作るために。新人歯科衛生士育成と働きやすい環境づくりのポイント
D-WESTAIL 代表 西尾 いづみ
歯科衛生士の育成・環境づくりが成功のカギ
新人歯科衛生士の育成と働きやすい環境づくりは、組織の長期的な成功に大変不可欠な要素です。歯科衛生士が臨床現場において欠かせない存在であることは言うまでもなく周知の事実だと思います。
そこで今回は新人歯科衛生士の「育成」と「働きやすい環境づくり」についてポイントをご紹介します。
新人歯科衛生士の育成
新人歯科衛生士の育成は患者の安全や医療の質を向上させる上で重要な役割を果たします。
新人歯科衛生士がスムーズに組織に適応し、最大限のパフォーマンスを発揮できるようにするためには、計画的で効果的なアプローチが求められます。
オリエンテーションやトレーニング
新人歯科衛生士が職場環境や業務に慣れるために、オリエンテーションやトレーニングプログラムを提供します。これは基本的な知識、技術や医療倫理、コミュニケーションスキルの向上を図り、安心して勤務をスタートできるようサポートするためです。
もし、育成制度も無く、オリエンテーションやトレーニングがない場合、臨床実習の延長線のような感覚で入職と同時に歯科衛生士業務に移行してしまう可能性が高いと考えられます。そうなると新人歯科衛生士は、不安と自信の無さに起因するリアリティギャップから離職へつながる原因の一つとなってしまいます。
そして、社会人としての心構えもここでしっかり研修する必要があります。
「学生時代は受け身。相手がしてくれることを期待し求める立場から、今度は、相手に貢献できるものを提供し、満足してもらう。与える立場になる。社会人のゴールは他人に貢献することである。」ということをしっかりここで研修しましょう。
歯科衛生士は患者の健康を維持、管理し、向上させる重要な役割を果たします。新人歯科衛生士の育成は、高い技術力と患者への配慮が求められる分野であり、指導者側にも適切なトレーニングとサポートが不可欠です。
患者へのコミュニケーションスキルの向上
患者とのコミュニケーションは歯科衛生士にとって非常に重要です。効果的なコミュニケーションスキルを養い、患者との信頼関係を築くためのトレーニングを提供する必要があります。
トレーニングとメンタリングの提供
新人歯科衛生士が業務に必要な知識や技術を効果的に習得するために、短期・中期・長期的な目標設定を新人・指導者が各自設定し、マニュアルなどを効果的に活用および提供して継続的なトレーニングを進めていきます。
同時に、経験豊富なメンターを割り当て、業務上の質問や悩みに対して的確なアドバイスを提供するメンタリングプログラムを同時に構築できると良いでしょう。
定期的なフィードバックと評価
新人研修の評価やフィードバックのプロセスを通じて、新人歯科衛生士の臨床現場での成長をモニタリングします。
ここで大事なのが、具体的な目標についての進捗度を確認しながら改善点を示し、同時に新人歯科衛生士自らも自己評価を行いながら成長できるようサポートすることです。指導者も、指導方法が間違っていないかなど、当初の目標設定の軌道修正が必要かどうかも定期的に見直しながら、指導していく必要があります。
自己啓発の機会提供、継続的な専門教育とアップデート
歯科の分野は常に進化しています。そのため、新しい技術や治療法に迅速に適応できるよう、継続的な専門教育やセミナーへの参加を奨励することも重要です。
新人歯科衛生士が自身のキャリアを発展させるためには、院内指導者以外にも、様々な自己啓発の機会を提供することも時には必要になるでしょう。その時には外部セミナーや研修、またはオンライン学習プラットフォームを活用して、スキルや知識の向上を奨励しましょう。
ポータルアプリ“オサポ”は歯科衛生士がスキルアップするのに必要な情報が掲載されているので、教科書のような感覚で活用ができます。例えば、新人歯科衛生士さんと一緒に見て、先輩が解説をするといった活用方法はコミュニケーションの一環にもなりおすすめです。
感情面のサポートとストレス管理
医療現場は時折ストレスフルな状況にさらされることがあります。そのため、新人歯科衛生士に感情の表現やストレス管理の方法を学び、心身の健康を保つためのサポートを提供しましょう。
新人歯科衛生士が働きやすい環境づくり
新人歯科衛生士が働きやすい環境を作ることでモチベーションや生産性が向上し、長期的に組織に貢献することで、組織の持続的な成功に繋がります。
柔軟な勤務体制とワークライフバランス
歯科衛生士はまだまだ女性の割合が高いため、ライフイベントに応じた柔軟なシフトや勤務形態、休暇の取得が可能な環境の提供など、ワークライフバランスが重要視されます。時と場合にもよりますが、リモートワークのオプションを検討し、個々のニーズに合わせた働き方をサポートします。これにより、仕事とプライベートの調和を実現しやすくなります。
オープンなコミュニケーションと情報の共有
組織内でのオープンで透明性のあるコミュニケーションにより、新人歯科衛生士が疑問や不安を解消しやすくなります。リーダー陣は情報の共有を徹底し、新人歯科衛生士が組織の方針や動向を理解しやすい環境を提供しましょう。
チームビルディングと社会的な結びつきの促進
院内に様々なチームがある場合、新人歯科衛生士が同僚との協力やコラボレーションを築くことは、組織内のポジティブな雰囲気を醸成します。
そのためチームビルディング活動や院内イベントを通じて、社会的な結びつきを促進し、協力関係を強化しましょう。医院理念や目標に向かって、良いチームになるために、時には経験や職位に関係なく本音が言える環境も必要です。
職場内の協力的な文化とチームワーク
お互いに尊重し合い、協力して業務を進めることができるような職場づくりが求められます。協力的な職場文化を醸成し、チーム全体が円滑に連携できる環境を整えましょう。
キャリアパスの明確化とサポート
新人歯科衛生士には将来のキャリアパスが明確であることが望ましく、それを導きサポートすることも重要です。
キャリアプランニングのサポートや昇進、資格取得などの機会を提供し、新人歯科衛生士が自身の成長とキャリアの方向性を理解しやすくしましょう。そしてスキルアップをサポートするため、定期的な研修や勉強会に参加し、新しい技術やトレンドに敏感に対応できるよう学びの機会を継続して提供しましょう。
仕事への意義づけ
仕事に対する意義や貢献度を理解しやすい環境を整えましょう。組織のビジョンやミッションを共有し、各個人が、自身の業務が組織全体の目標にどのように貢献するかを明確に伝えることが大切です。
フィードバックと成長の機会
定期的なフィードバックや評価を通じて、新人歯科衛生士の成長を促進しましょう。併せて認知や報酬の機会も提供し、優れた業績や努力が評価される環境を構築しましょう。仕事の評価やフィードバックが透明で明確であることが重要です。
自身の成長や改善点を理解しやすい環境を整え、モチベーションを向上させることにより、やりがいを感じながら働ける環境が整います。
育成や環境づくりは医院がレベルアップするチャンス
今回ご紹介したポイントを意識することで、新人歯科衛生士が安心して成長し、患者に質の高いケアを提供できるようになります。また、新人歯科衛生士が充実感を持ち、組織に寄与しやすい環境が整います。
これからの歯科医院には、育成と働きやすい環境の両面からのアプローチが求められていきます。これらは単に新人歯科衛生士のためだけではありません。指導者も共に成長できるのです。そして、それは院内全体がさらに発展することにつながるでしょう。