あなたは医療関係者ですか?

芯を受け継ぎ空気は変える。承継と移転から始まる歯科医院の第二幕【前編】

  
\ この記事を共有 /
芯を受け継ぎ空気は変える。承継と移転から始まる歯科医院の第二幕【前編】

広島県広島市安佐北区三入3丁目7-24 川原歯科・矯正歯科クリニック

川原 優 先生

国道183号を走っていると、エメラルドグリーンの建物が目に入ってくる。歯をあしらったロゴと「川原歯科・矯正歯科クリニック」の文字がなければ、歯科医院とは気づかないかもしれない。この医院の院長を務めるのは、川原優先生。父が約30年前に開業した医院を承継し、2024年8月に現在の地に移転・新築を果たした。外観に移転前の面影はないが、父から脈々と受け継がれているものもある。何を変え、何を変えなかったのだろうか。川原先生にお話をうかがった。

承継を機に総合歯科へ。患者増に伴い移転を決断

川原歯科・矯正歯科クリニックは、乳幼児から90歳以上の高齢者まで、1日約45人が来院する。小児の口腔機能発達、外科、矯正、予防などを幅広く行う総合歯科だ。近年は特に歯周治療のレベルアップに注力し、歯科衛生士は歯周病認定医によるオンラインセミナーを定期的に受講し、広島で開催される臨床歯周病学会にも歯科衛生士全員が参加する。「クリーニングだけでなく、プロとしてやりがいと使命感を持って働いてほしい」という川原先生の方針だ。

か強診(かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所)に認定されている川原歯科・矯正歯科クリニックでは、予防を担う歯科衛生士が重要な役割を果たしている。

川原歯科・矯正歯科クリニックが総合的な治療を提供するようになったのは、2021年に川原先生が勤務医として戻ってきてからだ。

「以前は、広島県内の別の場所で新規開業することも考えていました。でも実家で患者さんを一度でも診た以上、責任をもって引き継ごうと決めたんです。私は父が行っていなかった外科も担当していますし、途中から矯正歯科医の妻も入って矯正治療も始めていました。治療の途中で担当の歯科医師がいなくなる、なんてことは絶対に避けたかったです」

こう話す通り、川原先生は継承することを明確に決めていたわけではない。愛知学院大学を卒業後は、東海地方に残ることも考えていたほどだ。ただ、継ぐ可能性があることを考慮して地元でつながりを作っておこうとUターンし、広島県内で就職した経緯がある。

最終的には新規開業という選択をせず、正式に継承することになった。責任を持って患者と向き合う川原先生の真摯さが感じられるのではないだろうか。

承継後も変わらず多くの患者が通い続けていたが、ひとつ問題があった。

治療の幅が広がり患者数も増えたため、医院が手狭になったのだ。

ユニットを倒してカートを置くと後ろに人が通るスペースがなかったり、小児の付き添いで来た保護者が座って待つ場所を確保できなかったりと、不便を感じることが増えてきた。

増築・改築も考えたが建築基準の関係で大幅な増床はできず、駐車場も敷地内に充分に確保できていなかったため、移転を決めて土地探しをスタートした。

契約直前で白紙に戻した土地探し

診療の合間を縫って移転先を探し、100坪の土地を見つけて設計の具体的な話も進めた。しかし、あとは契約書にサインをするだけという状況になった頃、事態が大きく動く。

医院から徒歩2分のところに、256坪の土地が売りに出されたのだ。

「田んぼや家屋を解体しているなと気にはなっていたのですが、ある日通りかかったら『売地』と看板が立っていました。即、電話で問い合わせましたね」

最終的に100坪の土地の契約は白紙に戻し、この場所に移転することを正式に決定した。前の医院から近く患者さんが通いやすいことと、敷地内にスタッフと患者の駐車場を確保できることが決め手になった。

川原先生は「不動産業者に依頼しつつ、自分の足でも探すことが大切」と振り返る。土地探しには運とタイミングが重要と言われているが、その場で電話をかける行動力と普段からアンテナを張り巡らせる意識が運を引き寄せたのだろう。

現に、川原先生のすぐ後に土地について問い合わせをしてきた人がいたという。タイミングが少しでもずれていたら、今の場所に医院はなかったかもしれない。

詳しい医院コンセプトや院内写真、実際のレイアウト事例はこちらからご覧いただけます(ログインが必要です)

Copyright©ZOOM UP|OSADA,2025All Rights Reserved.