人間力重視の人材戦略が、選ばれる医院を作る【前編】


大阪府豊中市庄内西町 2-15-8 しまだ歯科クリニック
島田賢二先生
歯科衛生士をはじめとするスタッフの採用と定着は、歯科医院経営における大きな課題だ
ろう。そんな中でもしまだ歯科クリニックでは勤続 10 年以上の歯科衛生士が過半数を占め、
新卒も成長中だ。彼女たちが活き活きと働く院内の雰囲気は明るく、それに魅力を感じる患
者が通い続けている。しかし開院当初は集患もスタッフ定着も上手くいかず、頭を抱えてい
たという。どのように経営を軌道に乗せ、発展させていったのだろうか。
来院者数ゼロの日が続いても、患者に向き合い続ける
2005 年に開業したしまだ歯科クリニックはチェア 7 台を有し、1 日に 70 名強の患者が来
院する。勤続 10 年超から新卒までの 5 名の歯科衛生士がキビキビと笑顔で働く明るい雰囲
気が印象的だ。地域に根差し、地元住民から頼りにされているのが伝わってくる。
しかし、開業当初はまったく違っていた。
チェアは 2 台で、内覧会への来場者は数名。来院者数ゼロの日が 2~3 日続いたこともある
という。
その背景には、地域柄があると院長の島田賢二先生は振り返る。
「豊中は下町で人とのつながりが濃く、広告や SNS よりも紹介や口コミの影響力が強いエ
リアです。最初の半年くらいかなり苦戦しました」
苦境の中でも島田先生は「実直に患者さんのほうを向いて治療すればいい」と信じて「すべ
ては患者さまのため」をモットーに掲げ、一人一人の患者に真摯に向き合い続けた。その結
果、評判がじわじわ広がり患者数が増え、今日の安定した経営につながっている。

入職後の育成より、入職前の採用
医院が軌道に乗ったのには、もうひとつ理由がある。
歯科衛生士をはじめとするスタッフの教育だ。先生は「スタッフのレベルが医院のレベルに
直結する」と考え、接遇など人間性の部分を重視して育成をしていった。
しかし育成を進める中で、あることに気づく。
それは、育成よりも採用が重要だということ。医院に合った人材であれば育成と定着が格段
に上手くいくことに着目し、行動経済学や行動心理学を取り入れた独自のメソッドを開発
した。今も改善を継続しつつ、このメソッドに基づいた採用活動をしている。
歯科衛生士の採用難が叫ばれており、働きやすさや待遇の改善をする医院が増えている。し
かし島田先生はこの風潮には懐疑的だ。「もちろん、必要な給与や休日は確保したうえで」
と前置きしたうえで、医院の方針について話してくれた。
「患者さんが医療サービスに満足・納得して支払いをしてくれて、そのお金が結果的に給与
になるという考え方を当院ではしています。お金をもらえるから仕事をするという発想の逆
ですね。だから、患者さんが満足して通い続けたくなる医療サービスを提供しなければなら
ないという話を、折に触れてしています」
採用時にも、この考え方に共感できるかを重視している。見分けるポイントのひとつはメタ
認知能力、つまり客観的に自分を捉えて行動するスキルの高さだ。
「自分らしく働く」という言葉をよく聞くが、医療の世界には当てはまらないと島田先生は
考える。自分を客観的に評価し、相手の目にどう映るかを考えながら行動することが、患者
の満足につながるからだ。
在籍している歯科衛生士はこの方針に共感して行動に移しているため、患者からの評価も高
い。担当制を採用していることもあり、担当の歯科衛生士に会いに来て健康状態を確認して
もらうという感覚で通い続ける患者も少なくないそうだ。
歯科衛生士はスケーリングや問診などはもちろん、何気ない雑談を楽しんだりその中から
患者の困りごとを察知して提案をしたりと、コミュニケーションを密に取っている。人間味
のある温かな対応を気に入った患者が、長く通い続けているというわけだ。


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